子どもたちの笑顔は幸せの象徴。何としてでも守らなければなりません。健康な歯も同じです。お子さんの将来のために、今からできることがあります。明るく素敵な笑顔、美しく健康的な歯は、これから素晴らしい人生を送る子どもたちへのプレゼントです。
原因菌の感染を防ぐために
生まれたときのお口には、虫歯菌は棲んでいない!?
歯を失う原因の80%は虫歯と歯周病が占めており、これを防ぐことができれば、多くの方が自分の歯をよい状態に保つことができます。自分自身の歯でよい噛み合わせを保つことができれば、たくさんの選択肢が広がると思いませんか?
実は、生まれたときにはお口の中に虫歯菌や歯周病菌は棲んでいません。では、どこからやってくるのでしょうか。それは、すでにお口の中に菌が繁殖しているご家族のだ液を介して移ってくるのです。
まず始めに、この原因菌の感染を防ぐ。これが予防の第一歩となります。そのために、感染源のリスクを減らして環境を整える必要があります。
まずはご家族のお口の環境を変えましょう
一緒に過ごす保護者の方、おじいさんやおばあさんのお口の中にいる原因菌たちをまずは減らすこと。また、棲みにくい(定着しにくい)菌の質に変えていくことができれば、感染リスクを減らすことができるのです。定着しにくい環境を整えることができるのは、ご家族の協力があってこそ実現する予防対策法なのです。
生まれてくるまでにできること
実は、マイナス1歳から虫歯予防はスタートできます。妊娠6か月頃からキシリトールガムを毎日摂取することでお母さんのお口に棲む虫歯菌が減り、子どもへの感染を遅らせることができたという研究結果があります。
まずは保護者の方のお口に虫歯菌がいるのかどうかを調べ、リスクに合わせた虫歯予防対策をしていくことが子どもたちの予防につながります。
また、お母さんが重度歯周炎にかかっていると早産の危険性が7倍になると言われています。お口の中がネバついたり、歯磨き中に血が出たりした経験はありませんか?炎症の起きているときに出る物質が子宮に影響を及ぼすと考えられています。
なお妊娠中は、女性ホルモンの影響を受けてお口の中に菌が増殖しやすくなりますので、ぜひ一度来院して診療を受けてみてください。
3歳までの健口管理
生まれてから3歳になるまでが、虫歯菌たちが棲みつきやすい時期だと考えられています。できるだけお箸やスプーン、コップなど、食器の共有をしないことで、だ液を介して移ってくる菌を減らすことを心がけましょう。
だ液が接触しても菌が少なければ移りにくくなりますし、菌自体のくっつく能力が低ければ棲みつきにくくできます。保護者の方やおじいさんやおばあさんはこの時期までに菌を減らして、その状態を維持しておくことが重要です。
また、お子さんのお口の中に菌の大好物の砂糖があると、虫歯菌は棲みつきやすくなります。3歳頃までは砂糖をお口に入れない方が虫歯菌はくっつきにくくなりますし、よく噛んで食べる習慣もこの頃から形成されます。
お口に入れるものを発育状況にあった柔らかさや大きさに調整していくことで成長を促し、健口づくりの基礎を築いていきましょう。
歯磨き習慣
歯が生えてきたら、食後にガーゼで拭うことから始め、徐々に歯ブラシに慣れさせ、歯磨き習慣をつけていきましょう。まずは1日1回から慣らしていき、食後の習慣にします。また、歯がたくさん生えてくるとだんだん歯と歯の間に虫歯菌が隠れて棲むようになるので、歯ブラシのほかにデンタルフロス(糸の清掃用具)もどんどん使っていきましょう。
保護者の方が食後に歯磨き、フロスをしている姿をお手本に、自然と習慣にすることもできます。ご自身のケアとともに、よい習慣を見せてあげましょう。
また、毎日のケアでは取りきれない菌を早い時期から定期的に取り除くことで「歯医者は痛い思いをするところではなく健康のために通うところ」という認識を持ち、習慣とすることができます。生涯の健口につなげることができます。歯が生え始めたら、かかりつけの歯科医院を見つけましょう。
<歯磨きのポイント>
●自分磨きと仕上げ磨きの歯ブラシを別々にしましょう(噛んで毛先が広がってしまっても、仕上げ用ブラシがあればしっかり磨くことができます)。●広がっていなくても毛先は傷んできますので、1か月に一度は新しい歯ブラシに交換しましょう。●子どもが歯ブラシをくわえたまま転んだり椅子から落ちたりしてのどに刺さる事故が多くなっているので、保護者の方は眼を離さないよう注意しましょう。
歯の生え変わり
永久歯への生え変わりには個人差がありますが、平均的には6歳頃から始まります。生え始めの歯はとても柔らかく、虫歯になりやすいので特に注意が必要です。
この時期は歯ブラシの届きにくい場所が増え、歯並びや噛み合わせについても考える時期です。見た目も重要ですが、歯並びや噛み合わせによっては虫歯や歯周病のリスクとなることもあります。
加えて学校や塾、習い事など、生活スタイルが速いペースで変化し、心の変化も大きい時期です。食事の回数や質、睡眠、ホームケアの状態など、さまざまなリスクが重なってくることも考えられます。早い段階で歯磨きの必要性や方法を理解できるように導き、健口を守る力をつけていくことが大切です。