お口の中の健康状態は全身の病気に関わります

虫歯や歯周病の放置は、お口の中だけでなく、さまざまな病気の原因となることがあります。まさに「口は災いのもと」。しっかりとケアしましょう。

口は災いのもと

ここで言う「口は災いのもと」とは、お口の中の健康状態が全身の病気に大きく関わるという意味です。実は、お口の中に存在している細菌類(歯周病菌など)や炎症物質が歯肉(歯ぐき)の中の血管に流れ込んで全身に回ることで、さまざまな病気を引き起こすことがあるのです。

言い換えれば、お口の中を健康な状態に保つことで全身の健康を守ることができ、生涯、健康的な生活を送ることができる、ということです。 口は「災いのもと」であると同時に「生涯の健康のもと」でもあるのです。

お口の中の細菌類と関係のある病気

口は災いのもと

糖尿病
歯周病で炎症物質が多く出ていると、インスリンの働きが低下して血糖値が高くなります。糖尿病になると歯肉の血流が悪くなって血液が行きわたらず、歯周病菌を退治できなくなってしまいます。歯周病が悪化すると糖尿病も悪化し、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化してしまうわけです。

メタボ
メタボリックシンドロームの方に見られる、肥満、高血糖、高脂血症、高血圧のすべてに深く関連しているのが食生活です。バランスの取れた適切な食事を摂るためには、歯の健康が欠かせません。

また、脂肪組織で作られる「TNF-α(ティーエヌエフ・アルファ)」という炎症物質は、歯を支える骨を溶かし、歯周病を悪化させる作用があります。肥満の人は脂肪組織が多いためTNF-αが多く作られ、歯周病のリスクが上がり、噛みづらくなることで軟食傾向が強くなります。その結果、栄養不足になったりカロリーを摂り過ぎることとなったり、悪循環を生み出すと考えられます。

細菌性心内膜炎
心臓で血液の流れを管理している内側の弁の部分が細菌感染する病気です。感染すると、弁膜が破壊されたり心不全(心臓のポンプの作用がうまくいかず全身へ十分な血液が送れなくなってしまう状態)を引き起こしたりします。この弁に付着する細菌としてお口の中の細菌が多く発見されています。

関節リウマチ
自己免疫疾患であり、本来は自分を守るべき免疫システムが自分自身を攻撃してしまう病気です。 原因は特定されていませんが、体のどこかに慢性炎症があるとそれが誘因となって免疫システムの暴走が起こる、というのが有力な説です。慢性炎症の1つに歯周病が挙げられ、これを治療することでリウマチが改善したとの報告もあるようです。

早産・低体重児出産
歯周病の炎症物質と出産に関わる物質には共通のものが多くあります。歯周病による炎症物質が血液に乗って子宮や胎盤に運ばれることで陣痛が誘発されて早産を引き起こしたり、歯周病菌が運ばれることで胎児の発育不全による低体重児出産が引き起こされたりすると考えられています。

また妊娠中は、女性ホルモンのバランスが崩れてお口の中の細菌が増えやすく、つわりなどで満足にケアができなかったり、だ液の酸性度が高まったりすることで虫歯や歯周病が起こりやすい環境が作られます。

骨粗しょう症
女性の場合は、閉経後に女性ホルモンのエストロゲンが減少することで骨を吸収する物質が増加し、骨粗しょう症がいっそう起こりやすくなります。歯槽骨の吸収が起こる歯周炎も、このエストロゲンの減少が関係する可能性があります。骨粗しょう症の治療の結果として、歯周病の進行を抑制する可能性があると考えられています。

誤嚥性肺炎
高齢者や寝たきりの方などの飲み込む力が低下すると、歯周病菌などのお口の中の細菌がだ液や食べ物と一緒に気管に入り込みやすくなり、肺炎を起こしやすくします。お口の中を清潔にして細菌を減らすことが肺炎を防ぎ、命を救うことにもつながります。

口臭
口臭の原因として考えられるものには以下の3つがあり、歯周病によるものは病原菌が作り出す有毒ガスが原因と考えられています。

・生理的口臭(朝起きたときや体が疲れているとき、だ液が少なくなってお口の中に細菌が増える)
・外的口臭(ニンニクやネギ、お酒やタバコによる)
・病的口臭(歯周病など、お口の中の病気)

がん
口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、膵臓がん、胃がん、血液のがんとの関連が疑われています。罹患率の上昇している食道がんに関して言えば、日本人は欧米人に比べて熱い食べ物・飲み物の摂取が多く、口腔・咽頭・食道の粘膜が傷ついて炎症を起こし、それが発がんリスクを上げています。

歯周病菌も粘膜の慢性炎症の原因の1つとの研究報告(国立がん研究センター研究所分子腫瘍学部)もあります。食道がん患者200人のがん細胞から採取した2,000検体を調べたところ、32%に歯周病菌が認められました。

脳梗塞・心筋梗塞
脳梗塞・心筋梗塞は、脳や心臓に栄養を運ぶ血管が詰まってしまう命に関わる病気です。歯周病にかかると歯肉の炎症部分から細菌が侵入して、血管を塞ぐ血栓が作られやすくなります。また、歯肉の炎症によって作られる物質が全身の血管の老化を進めてしまいます。歯周病の人は血管の病気になりやすいということがわかっています。

お口の中の状態が関係する病気や体の変化

認知症認知症
うまく噛めないと認知症になりやすいことがわかってきました。歯がほとんどなくて義歯未使用の人は、20本以上歯が残っている人に比べて、認知症のリスクが約2倍になることが厚生労働省研究班の調査で明らかになりました。うまく噛めないことから脳への刺激が少なくなり、それが認知機能を低下させていると考えられます。

姿勢の悪化、顔の歪み顔の歪み
噛み合わせが悪いと、下あごがずれて、頭が左右どちらかに傾き、片方の肩が下がるなど姿勢が悪くなり、肩こり・背筋痛・腰痛、さらに不眠・生理不順などの症状が出ることもあります。また、きちんと噛める側の頬はふっくらとし、噛んでいない側は吹き出物ができて頬がやつれ、左右非対称の顔になったという症例も報告されています。

視力の低下視力の低下
秋田県内の中学生から短大生を対象に調査したところ、第一大臼歯の虫歯3本以上の子どもは、2本以下の子どもよりも視力が悪くなっており、また、硬い食品をよく食べる子どものほうが、そうでない子どもより視力がよいという結果も報告されています。目は脳の一部と言われており、咀しゃくが脳血流を増加させることと関係があるのかもしれません。

お口(全身)の健康に影響を与える因子

喫煙喫煙
たばこを吸うと毛細血管が収縮し、血流が悪くなります。歯肉が貧血を起こして、歯を支えている組織にも悪影響が出てきます。また歯肉の繊維が硬くなり、治療を進めても細菌の棲み家がなくならず、繁殖しやすくなります。さらに免疫力も低下し、細菌は増えやすくなります。

これは、歯周病を悪化させることにつながります。さらにたばこを吸う本人はもちろん、近くで煙などに含まれた物質を吸い込むことでも影響を受けます。禁煙することが歯周病予防・治療の第1歩です。

免疫健康悪化
外部から侵入してきた細菌などの異物と戦い、体を守る働きを担うのが「免疫力」です。人によって強弱の差があったり、体調により左右されたりしますが、免疫力が下がると体調を崩しやすくなります。お口の中も同じです。免疫力が下がり細菌の勢力が上回ると、歯肉が腫れ、歯周病が進行しやすくなったり、口内炎ができやすくなったり、口臭などの原因にもなったりします。

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